動画撮影において「どのメモリーカードを選ぶべきか」は、安定した収録を行ううえで非常に重要です。

特に4K・8K撮影やRAW収録、高フレームレート撮影では、必要な容量や書き込み速度を満たしていないと、録画停止やエラーの原因になります。

結論から言うと、メモリーカードの必要容量や記録可能時間は「解像度」ではなく「ビットレート」で決まります。例えば、128GBのカードでも約1時間しか撮影できないケースもあれば、10時間以上記録できるケースもあります。この違いは、すべてビットレートによるものです。

今回は、動画撮影で使用される主な記録メディアの種類や速度規格を整理しながら、ビットレート別の記録可能時間とメモリーカード容量の目安を解説します。

1. 動画撮影で使われる主な記録メディア

現在の映像制作現場では、用途やカメラに応じてさまざまな記録メディアが使用されています。

1-1. SDカード

SDカード
出典:Sandisk

最も普及している記録メディアです。ミラーレスカメラや業務用カメラで広く採用されており、価格と容量のバランスに優れています。

動画撮影では容量だけではなく、V30・V60・V90といった速度規格も重要になります。

1-2. microSDカード

microSDカード
出典:Sandisk

アクションカメラやドローンで広く使用されている小型メディアです。

近年は大容量化が進んでいますが、高ビットレート収録では発熱や耐久性も考慮する必要があります。

1-3. CFexpress Type A

CFexpress Type A
出典:Sandisk

主にSONYのFX3、FX30、α7S IIIなどで採用されている高速メディアです。

高ビットレート収録や高フレームレート撮影に対応し、SDカードでは利用できない収録モードをサポートする場合もあります。

1-4. CFexpress Type B

CFexpress Type B
出典:Sandisk

Canon、Nikon、シネマカメラなどで広く採用されている高速メディアです。

RAW動画や高解像度収録など、大容量データを扱う用途に適しています。

ほかにもSxSカードやAXSメディアなど、業務用・シネマカメラ向けの記録メディアも存在しますが、今回は一般的な撮影現場で使用頻度の高いメディアを中心に解説します。

2. メモリーカード選びで重要な「速度規格」

動画撮影では、容量だけではなく、持続的な書込速度も重要です。

容量が十分あっても、カードの速度が不足していると収録エラーや記録停止が発生する場合があります。

2-1. Video Speed Class(V6・V10・V30・V60・V90)

SDカードやmicroSDカードには、動画撮影向けの速度規格としてVideo Speed Classが定められています。

規格最低保証書込速度
V66MB/s
V1010MB/s
V3030MB/s
V6060MB/s
V9090MB/s

数字は最低保証書込速度を表しています。

例えば、V90であれば、最低でも90MB/s以上の速度で持続的に書き込みが行えることを意味します。

スピードクラス規格/動画撮影のための規格 – SD Association

2-2. Video Performance Guarantee(VPG200・VPG400・VPG800・VPG1600)

CFexpressカードでは、VPG(Video Performance Guarantee)という動画向け速度保証規格が採用される場合があります。

規格保証された持続書込速度
VPG200200MB/s
VPG400400MB/s
VPG800800MB/s
VPG16001600MB/s

RAW動画や高ビットレート収録では、瞬間的な最大速度よりも安定した持続書込性能が重要になります。

規格上、CFexpress Type Aは最高でVPG800、CFexpress Type Bは最高でVPG1600に対応します。

Video Performance Guarantee (VPG) – JA – CompactFlash Association

2-3. 最大速度と最低保証速度の違い

メモリーカードのパッケージには、

  • Read 1800MB/s
  • Write 1600MB/s

などの数値が記載されています。

しかし、これらは瞬間的な最大転送速度です。

動画収録では長時間にわたり安定してデータを書き込み続ける必要があるため、最大速度だけではなくV90やVPG400などの最低保証速度も確認することが重要です。

3. 記録可能時間はどのように計算されるのか

収録時間は、解像度ではなくビットレートによって決まります。

3-1. 主な収録フォーマットとビットレートの目安

「4Kなら何時間撮れるか」という質問をよく見かけますが、記録可能時間は解像度だけでは決まりません。

実際には収録フォーマットごとにビットレートが異なり、必要な容量や記録可能時間も大きく変わります。

収録フォーマットビットレートの目安
XAVC HS 4K30〜280Mbps
XAVC S 4K60〜280Mbps
XAVC S-I 4K240〜600Mbps
ProRes 422 HQ 4K700〜1500Mbps
RAW系1Gbps前後〜数Gbps
  • 実際のビットレートはカメラやフレームレート、収録設定によって異なります。

主な収録フォーマットの特徴

XAVC HS

H.265(HEVC)を採用した高効率圧縮により、データ量を抑えやすく、長時間収録向き。

XAVC S

H.264(AVC)を採用した、現在もっとも一般的な収録フォーマット。

XAVC S-I

All-Intra方式を採用した編集向け収録フォーマット。編集耐性に優れるが容量は大きい。

ProRes

Appleが開発した、ポストプロダクション向けの高品質コーデック。

RAW

センサー情報をできるだけ保持した状態で記録する収録フォーマット。最も容量が大きいが、編集自由度も高い。

3-2. 記録可能時間の計算式

基本的な考え方は非常にシンプルです。

記録可能時間 = 容量 ÷ ビットレート

ただし、容量はGB、ビットレートはMbpsで表記されるため、実際には単位変換が必要になります。

概算では、以下の計算式で求められます。

記録可能時間(秒) = 容量(GB) × 8 × 1000 ÷ ビットレート(Mbps)

8はbitをbyteに変換するための係数、1000はGBとMbpsの単位をそろえるための換算値です。

この考え方を理解しておくと、収録設定が変わっても必要な容量をおおよそ見積もることができます。

4. ビットレート別の記録可能時間の目安【早見表】

「256GBでどれくらい撮影できるのか」「4K動画は何時間記録できるのか」といった疑問は、ビットレートから概算できます。記録可能時間の目安として、以下の早見表をご利用ください。

ビットレート主な収録フォーマット例128GB256GB512GB1TB
25MbpsH.264 / H.265 HD約11時間22分約22時間45分約45時間30分約91時間1分
35MbpsXAVC S HD約8時間7分約16時間15分約32時間30分約65時間1分
50MbpsXAVC S HD約5時間41分約11時間22分約22時間45分約45時間30分
60MbpsXAVC HS 4K約4時間44分約9時間29分約18時間58分約37時間57分
100MbpsXAVC HS / XAVC S 4K約2時間50分約5時間41分約11時間22分約22時間45分
150MbpsXAVC HS / XAVC S 4K約1時間53分約3時間47分約7時間35分約15時間10分
200MbpsXAVC HS / XAVC S 4K約1時間25分約2時間50分約5時間41分約11時間22分
280MbpsXAVC HS / XAVC S 4K約1時間1分約2時間2分約4時間4分約8時間7分
400MbpsAll-Intra系 / XF-AVC約42分約1時間25分約2時間50分約5時間41分
600MbpsXAVC S-I 4K約28分約56分約1時間53分約3時間47分
880MbpsProRes 422 HQ 4K約19分約38分約1時間17分約2時間35分
1200MbpsRAW系 / 高ビットレート収録約14分約28分約56分約1時間53分
  • 実際の記録可能時間は、カメラや収録設定によって異なります。
  • 同じ収録フォーマットでも、解像度やフレームレートによってビットレートは変動します。

ILME-FX3 | ヘルプガイド | 動画の記録可能時間

PXW-Z200、HXR-NX800で使用可能なメディアと記録時間の目安を知りたい。 | ソニー

5. メモリーカード選びのポイント

メモリーカードを選ぶ際には、容量以外にも気をつけたいポイントがあります。

5-1. 容量だけではなく速度規格も確認する

容量が十分でも、必要な書込速度を満たしていなければ収録できません。

特にXAVC S-IやRAW収録では、V90やCFexpressカードが必要になる場合があります。

5-2. カメラの推奨メディアを確認する

同じカメラでも収録モードによって使用可能なメディアが異なります。

購入前にメーカーの対応表を確認しておきましょう。

ILME-FX3 | ヘルプガイド | 使用できるメモリーカード

PXW-Z200/HXR-NX800 | ヘルプガイド | 推奨メモリーカードについて

5-3. 長時間収録では余裕を持った容量を選ぶ

計算上は足りていても、予備メディアやバックアップを考慮すると余裕を持った容量設計が安心です。

容量選びに迷った場合の目安

HD収録中心

128GB

一般的な4K撮影

256GB

長時間の4K撮影

512GB

ProRes/RAW撮影

1TB以上

5-4. 放熱性能も考慮する

高ビットレート収録では、メモリーカードやカメラ本体の発熱により記録が制限される場合があります。

特に小型カメラや長時間収録では、カード性能だけでなく放熱設計も安定性に影響します。

まとめ|記録可能時間はビットレートで決まる

動画撮影で使用されるメモリーカードには、SDカードやCFexpressをはじめとするさまざまな種類があります。

また、必要な容量は解像度に加えて、収録フォーマットやビットレートによって大きく変化します。

メモリーカードを選ぶ際は、

  • 記録メディアの種類
  • 速度規格(V30・V60・V90・VPG)
  • 収録フォーマット
  • ビットレート
  • 必要な収録時間

を総合的に判断することが重要です。

撮影前に必要な容量と速度を把握しておくことで、収録中のトラブルを防ぎ、より安定した映像制作につながります。

「128GBや256GBのメモリーカードでどれくらい撮影できるのか」を判断するためにも、ビットレートと収録フォーマットの関係を理解しておきましょう。

記録可能時間は解像度ではなくビットレートによって決まるため、使用する収録フォーマットに応じて必要な容量を見積もることが重要です。

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