カメラを用途によって使い分けていると、センサーサイズの違いに悩まされることがあります。

センサーサイズとは、デジタルカメラなどに内蔵されている「イメージセンサー」の物理的な大きさのことです。

IMAGE SENSOR

フィルム時代は35mmフルサイズが標準でしたが、デジタル化に伴いさまざまなセンサーサイズが登場しました。

その結果、同じ焦点距離のレンズでも、センサーサイズが変わると画角(撮影範囲)も変わるという現象が起こるようになりました。レンズを選ぶたびに換算計算が必要になり、ややこしく感じる方も多いのではないでしょうか。

今回はそんなお悩みを解決するため、センサーサイズと焦点距離の基本から、換算計算に必要となるクロップ倍率について整理した上で、レンズ選びの注意点を解説します。

1. センサーサイズでなぜ画角が変わるのか?

「同じ50mmレンズなのに、カメラを変えたら画角が変わる」

これは故障や不具合ではなく、センサーサイズの違いが原因です。

1-1. レンズが作り出す像は同じ

まず前提として、レンズが作り出す像(イメージサークル)は基本的に同じです。

50mmレンズであれば、どのカメラでも同じ大きさの像を投影します。

IMAGE CIRCLE

違うのは、その像の「どこを切り取るか」です。

1-2. センサーの「切り取る範囲」が違う

同じ焦点距離なのに画角が変わる理由は、センサーの大きさによって切り取られる像の範囲が変わるからです。

レンズ

円形の像(イメージサークル)を作る

センサー

イメージサークルの一部を切り取る

SENSOR SIZE
  • 大きいセンサー → 広い範囲を受け取る → 広く写る
  • 小さいセンサー → 中央だけを切り取る → 寄って見える

これをクロップ(切り取り)効果といいます。

重要なのは、レンズの焦点距離が変わったわけではないという点です。

  • 焦点距離が変わる
  • センサーが小さいから画角が狭くなる

2. クロップ倍率とは

焦点距離の換算計算を考える上で重要なのが、クロップ倍率です。

クロップ倍率とは、35mmフルサイズ(36×24mm)を基準=1.0倍とした換算係数で、センサーの対角長を用いて算出します。

CROP SIZE

基準となる35mmフルサイズのセンサー対角長は43.3mmです。これを各センサーの対角長で割ることで、クロップ倍率を求めることができます。

クロップ倍率 = 43.3 ÷ 各センサーの対角長

実焦点距離にこのクロップ倍率をかけることで、フルサイズ換算の焦点距離を算出することができます。

フルサイズ換算の焦点距離 = 実焦点距離 × クロップ倍率

クロップ倍率を考慮しないと同じ焦点距離なのに画角が違うといった混乱が生じるため、フルサイズ換算の焦点距離で揃えるのが一般的です。

フルサイズは「フルフレーム(FF)」と呼ばれることもあります。

3. センサーサイズ別のクロップ倍率一覧【早見表】

主要センサーサイズの対角長とクロップ倍率を整理しました。基準となる35mmフルサイズより小さいセンサーの場合はクロップ倍率が1.0倍より大きくなり、画角が狭くなります。対して、35mmフルサイズより大きいセンサーの場合は1.0倍より小さくなり、画角が広くなります。

センサーサイズ有効寸法(mm)対角長(mm)クロップ倍率フルサイズ換算
(焦点距離50mm)
ARRI 65mmラージフォーマット54.12×25.5859.80.72倍36mm
Blackmagic 65mmラージフォーマット50.81×23.3255.90.77倍39mm
FUJIFILM GFXラージフォーマット43.8×32.954.80.79倍40mm
35mmフルサイズ36×2443.31.0倍50mm
APS-H28.7×1934.41.26倍63mm
Super 35mm24.9×1428.61.51倍76mm
APS-C(Sony/Nikon/FUJIFILM)23.5×15.628.21.53倍77mm
APS-C(Canon)22.3×14.926.81.61倍81mm
マイクロフォーサーズ(MFT)17.3×1321.62.00倍100mm
1インチ13.2×8.815.92.72倍136mm
Super 16mm12.5×7.414.52.99倍150mm
2/3インチ(B4)9.6×5.411.03.94倍197mm
1/2インチ6.4×4.88.05.41倍271mm
1/2.3インチ6.17×4.557.75.62倍281mm
1/3インチ4.8×3.66.07.22倍361mm

センサー有効寸法は、メーカーや撮影モードにより若干異なります。

センサーサイズが小さくなるほどレンズも小型・軽量化ができるため、ズームレンズを高倍率化することが容易になります。

4. レンズ選びで気をつけたいポイント

センサーサイズと焦点距離の関係を理解した上で、実際にレンズを選ぶ際に重要になるのが次の3点です。

4-1. ケラレ

センサーサイズをまたぐときに最も起こりやすいトラブルが、ケラレ(周辺が暗くなる現象)です。

VIGNETTE

ケラレが起こるのは、小さいセンサー用のレンズを大きいセンサーに使う場合です。

例:APS-C専用レンズをフルサイズカメラで使用

レンズはそれぞれ決まった大きさのイメージサークルしかカバーしていません。

その結果、小さいセンサー用のレンズを大きいセンサーに使うと次のようなことが起こります。

  • イメージサークルが足りない
  • 四隅が暗くなる(ケラレる)
  • 最悪の場合、円形に写る

これは物理的な問題なので、クロップ倍率とは別の話です。

テレコンバーターやデジタルエクステンダーを使用すればイメージサークルを拡大できる場合がありますが、注意点があります。

テレコンバーター/デジタルエクステンダー使用時の注意点

レンズが対応している必要がある

焦点距離が伸びる

F値が暗くなる

一方で、大きいセンサー用のレンズを小さいセンサーに使う場合は、ケラレの心配はありません。

例:フルサイズ用レンズをAPS-Cカメラで使用

レンズの対応フォーマット > センサーサイズ

この関係を守るのが基本です。

4-2. 被写界深度

センサーサイズが変わると、画角だけでなく被写界深度の見え方も変わります。

被写界深度とは、ピントが合っているように見える「範囲(奥行き)」のことです。要は、被写界深度が浅いとボケが大きくなり、逆に深いとボケが小さくなります。

DEPTH OF FIELD

ここで重要なのは、「同じ焦点距離」ではなく「同じ画角で比較する」ことです。

焦点距離を変えて画角を揃えると、センサーが小さいほど被写界深度は深くなるという違いが出ます。

これはセンサーそのものの特性というより、同じ画角に揃えるために焦点距離が短くなることが主な理由です。

例えばインタビュー撮影で:

  • フルサイズ+85mm F1.8
  • MFTで同じ画角にするなら約42.5mm

この場合、同じF値でも背景のボケ量は変わります。(フルサイズのほうが焦点距離が長いため、ボケが大きくなる)

F値の「換算」について

被写界深度まで厳密に揃える場合は、F値もクロップ倍率を掛けて考えるという方法があります。

フルサイズ換算の被写界深度の目安 = F値 × クロップ倍率

例:APS-C(1.5倍)でF2.0の場合 → フルサイズ換算では約F3.0相当の被写界深度

これは、あくまでボケ量の目安です。

必要に応じて、シャッタスピードやISO、NDフィルターで露出を調整する必要があります。

4-3. マウントの違い

メーカーや機種によって、レンズとカメラ本体を接続するマウントの形状が異なります。

代表的なマウントには次のようなものがあります。

  • EF/RFマウント
  • Eマウント
  • Lマウント
  • PLマウント
  • MFTマウント

同じセンサーサイズでも、マウントが違えばそのままでは装着できません。

もし違うマウントのレンズを使用したい場合、マウントアダプターを活用する方法があります。

ただし、注意点があります。

マウントアダプター使用時の注意点

フランジバック(マウントからセンサーまでの距離)の関係で装着できない組み合わせがある

電子接点が機能しない場合がある

AFや手ブレ補正が制限されることがある

アダプター精度によってバックフォーカス(レンズ最後端からセンサーまでの距離)がズレる可能性がある

また、シネマ用途でPLレンズを使用する場合は、剛性の高いアダプター選定が必要です。

まとめ|センサーサイズの“賢い”使い分け方

最後にセンサーサイズの違いによって向いている使い方をまとめました。

センサーサイズ小センサーサイズ大
望遠が必要な場合
フォーカスがシビアな場合
安価な高倍率ズームレンズが必要な場合
広角が必要な場合
ボケを活かしたい場合
シネマチックな画づくりが必要な場合

センサーサイズとレンズを上手に使い分けられると、撮影の幅が広がります。今回紹介した早見表と合わせて、ぜひ参考にしてみてください。

多くの場合はレンズよりもカメラ本体を優先して選ぶと思います。一方で、カメラは消耗品、レンズは資産であるという考え方もあります。使いたいレンズをまず選んでから、カメラ本体を選ぶというのもひとつの選択肢です。