エンコーダーと聞いて、多くの方が最初に思い浮かべるのは配信ソフトのOBSではないでしょうか。
OBSは多機能なソフトウェアであり、映像・音声入力から合成、配信までを一貫して行うことができます。また、設定を細かくカスタマイズできるため、初心者から上級者まで幅広く利用されています。
しかし、万能であるからこそ、弊社ではOBSをエンコーダーとしては使用しておりません。
今回は、その理由と弊社が考えるエンコーダーの選び方について紹介します。
1. エンコーダーの基本
弊社がOBSをエンコーダーとして使用しない理由を説明する前に、まずはエンコーダーの基本をおさらいしておきたいと思います。
1-1. エンコーダーとは
そもそもエンコーダーとは、映像と音声をライブ配信に適した形式にエンコード(変換)する機器・システムのことをいいます。
エンコードされたデータは配信プラットフォームのサーバーに送信され、受信側でデコード(解読)されることで、視聴者に映像と音声が届きます。

また、エンコーダーは配信だけではなく、デコーダーという機器に送信することで映像伝送にも利用できます。
1-2. エンコーダーの種類
エンコーダーにはいくつかの種類がありますが、代表的なのはソフトウェアエンコーダーとハードウェアエンコーダーです。ほかにもモバイルエンコーダーやクラウドエンコーダーがありますが、弊社では使用していないため今回は割愛します。
① ソフトウェアエンコーダー
ソフトウェアエンコーダーとは、OBSやWirecast、vMixなどのパソコン上で動作する専用ソフトウェアのことです。

パソコンひとつで配信できるオールインワンの手軽さが魅力で、無料ソフトもあるため初心者でも導入しやすくなっています。
② ハードウェアエンコーダー
ハードウェアエンコーダーとは、Blackmagic Web PresenterやLiveShell、LiveU Soloなどのエンコード処理専用に設計された外部機器のことです。

カメラやスイッチャーからの映像を直接入力し、パソコンを接続しなくても配信できる機種もあります。エンコード専用に設計されているため安定性が高いのが魅力ですが、コストがかかるので導入のハードルは少し高いと言えます。
弊社が使用しているのは、ハードウェアエンコーダーです。
2. エンコーダーの特徴
エンコーダーには、それぞれにメリットとデメリットがあります。2つのエンコーダーの特徴を整理して、なぜ弊社がOBSなどのソフトウェアエンコーダーを使用しないのかを説明していきます。
2-1. ソフトウェアエンコーダーの特徴
ソフトウェアエンコーダーは、多機能でカスタマイズ性が高いのが特徴です。無料ソフトでも必要十分な機能を備えており、配信設定を細かくいじることもできれば、テロップの挿入、クロマキー合成、音声のミックスなども1台で行えます。
一方で、処理が増えるほどパソコンへの負荷が高くなるため、安定した運用には十分なスペックが必要です。また、トラブル発生時には、パソコンの環境設定とソフトウェアの設定との原因の切り分けが難しくなる場合があります。例えば、外部音声しか使用していないのに、パソコンの内蔵マイクがオンになっていたということもよくあります。ある程度の知識と技術がないと、トラブル対応が難しいかもしれません。
メリット
- パソコンだけで完結できる
- 機能が多く、設定の自由度が高い
- 導入コストを抑えられる
デメリット
- パソコンの性能に依存する
- パソコンの設定の影響を受ける場合がある
- 使いこなすには知識と技術が必要
2-2. ハードウェアエンコーダーの特徴
ハードウェアエンコーダーはエンコード専用機器であるため、一般的に長時間運用時の安定性が高く、遅延を一定に保ちやすいのが特徴です。また、設定項目も比較的シンプルな製品が多いため、配信トラブルを減らすことができます。機種によっては通信状況のモニタリング機能や、自動で品質調整を行える機能を備えています。
ただし、導入にはコストがかかるほか設置スペースも必要になります。エンコード専用に導入する必要があるかは、用途によって考える必要があります。
メリット
- 長時間配信でも安定性が高い
- 機能がシンプルで運用しやすい
- 通信状況の変化に強い
デメリット
- 導入コストがかかる
- 設置スペースが必要
- 機能が限定される傾向がある
2-3. ソフトウェアエンコーダーを使わない理由
一般的にソフトウェアエンコーダーは、ハードウェアエンコーダーよりも柔軟性が高く、多機能な傾向があります。しかし、業務で使用する場合、ソフトウェアエンコーダーの使用には、一定のリスクが伴います。ハードウェアエンコーダーを使用することで、そのリスクを抑えることができると弊社では考えています。
その理由は、2つあります。
理由① 負荷の分散
ソフトウェアエンコーダーはパソコンの性能に依存するため、パソコンに高い負荷がかかった場合、フリーズしてしまう危険性があります。OBSに限らず、みなさんも急にソフトがフリーズしてしまったり、強制終了してしまったという経験があると思います。もし配信中にフリーズしてしまったら、配信を一時中断しなくてはいけません。

特に複数のソフトを同時に起動したり、複数の処理をパソコンに集中させる構成では注意が必要です。そのため、ひとつの機器に役割を集中させるのではなく、負荷を分散させることでリスクを回避することが大切になります。
理由② 設定ミスの防止
ソフトウェアエンコーダーは多機能である反面、設定項目が多くヒューマンエラーが起きやすい傾向にあります。一方、ハードウェアエンコーダーは機能が限定されているため、設定ミスのリスクを抑えやすくなります。

「餅は餅屋」ということわざがありますが、ライブ配信においても用途に特化した専用機器を使用することでミスを減らすことが重要です。
3. エンコーダーの選び方
ここまでのお話は、どちらのエンコーダーが優れているのかという話ではありません。利用目的や用途によっては、ハードウェアエンコーダーよりもソフトウェアエンコーダーのほうがメリットが大きい場合もあります。
エンコーダーを選ぶ際の参考に、それぞれが向いている配信例を最後に紹介します。
3-1. ソフトウェアエンコーダーが向いているケース
- コストをかけずに手軽に配信したい
例)自社完結型のインハウスセミナー - YouTubeのチャットを見ながら配信したい
例)YouTuber、VTuber、ゲーム実況 - 機器をたくさん使わずにコンパクトに配信したい
例)配信機材の設置スペースが限られている
3-2. ハードウェアエンコーダーが向いているケース
- 固定回線がない、移動しながら配信したい
例)携帯電話回線を使用して配信できるLiveU Soloなどを使用 - 長時間連続で配信したい
例)24時間定点カメラ配信 - 複数回線で冗長化が必要な現場
例)バックアップサーバーへの別回線での配信
4. 番外編
さて、弊社ではOBSをエンコーダーとしては使用していないと最初に述べました。しかし、実際にはOBSを業務で使用しています。その用途は、テロップ送出システムです。
OBSは対応機器や設定を組み合わせることで、透過データ(アルファチャンネル)を含む映像出力が可能です。つまり、OBSを経由して「アニメーション付きのテロップを出力することができる」ということです。
アニメーション付きのテロップをライブ配信に取り入れるのは意外にハードルが高く、選択肢も限られています。これについては、また機会があれば紹介したいと思います。
▼▼おすすめのハードウェアエンコーダー▼▼
